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2006年10月23日(月)
酒楽愉人がいる店 "Dining Bar Brass” (北千住)  第18話 ブラス 

【ドリンクチョイスならではの秘蔵酒】 酒楽愉人が書くBlog  これまでの酒楽愉人 

  偶然と必然は、人生のあざなえる縄 である。

 古くは宿場町であった北千住、JR常磐線と東武伊勢崎線、東京メトロ日比谷線および千代田線が合流し、1日の乗降客数が150万人を超える東京北部の玄関駅だ。

 「『これほど大きい駅なのにBARが何故無いのだろう。(自分が見てきた)地方にもあるのに。』  実家(北千住)へ帰る度に思っていました。」 、と話すのは オーナーバーテンダーの宮田氏。物件との運命的な出逢いもあり、北千住で1軒目のBARを開店してから10年になる。

 都心は銀座・渋谷、遠くは鎌倉・沖縄で修行経験のある宮田氏、転機は常に人との繋がりから。バーテンダーとしての基礎 (”バーテンダー”である以前に”人”であるべき) は最初の働き先、沖縄で学んだという。

 内装は、実家近くに住む工務店の親方(先輩でもある)とマスターの二人で作り上げた。テーブル、椅子、スツール、カウンター、バックバーは沖縄のファニチャーショップから空輸したもの。重厚感、独創性の中に暖かみを感じる。

 「カクテルやお酒も、まずは人vs人だと思います。お出しする前の言葉のやりとりで気に入らなければ既に不味(まず)い。気に入ってもらえれば 『必ず美味しい』 訳ではないが、美味しい可能性は高くなる。当然、技術や知識も大事で、人の良さに甘んじてはいけないのですが。」

 マスターにカクテルを創っていただいた。 

サイドカー

  「本気でカクテルを考えるようになったのは、自分で店を始めてからですよ。」 と謙遜するマスター。 「サイドカーはバランスであり、融合感。3つの材料が殺し合わず共存できるよう、そして何れかが出過ぎないよう意識しています。」 落ち着き払った一連の動きは、完成度の高さを予感させる(カクテルベース:レミーマルタン V・S・O・Pコアントロー、レモンジュース)。

 シェイクを行うショートカクテルの基本と言われる ”サイドカー”、ベースのブランデーを ジン にすると ”ホワイトレディ”、ウオッカ にすると ”バラライカ”、ラム にすると ”X.Y.Z”、テキーラ にすると ”マルガリータ” になる。

 「”カクテル=甘ったるいもの”という固定観念を払拭したい」 との考えから、やや酸味を強調した仕上がりとなっている。「レシピを ブランデー 30ml, コアントロー 14ml, レモンジュース16mlにしています。15mlのところを16ml と意識することに意味があったりします。」 続けて、

 「シェイクをする時は、材料、空気、氷のイメージに加えて、『美味しくなれ』 と念を込めています。」 疑いようのないカクテル技術を有していながら、それを知る客が少ない というから驚きだ。 

マティーニ

  最近は BAR(他店)へ行くと、マティーニ を頼むことが多いというマスター(カクテルベース : ビーフィータージンノイリープラット ドライ)。

 「作法にこだわる人も多い。ジンが プレミアムジン だったり、ベルモット を2つ使ったり。手順が増えるがゆえに ”緩いマティーニ” が案外多く存在するように思います。作法それぞれに意味があるのは解りますが ”緩いマティーニ” は好きではない。作法を重んじれば重んじるほど本質からズレていることもあるのではないでしょうか。」

 『Simple is the best 』、創作過程は実にシンプルで無駄がない。

 マティーニ は、続ければ続けるほど解ってきたような気がしています。ステアしていると、バースプーンを伝って混ざり具合がわかるような・・・、”今ならok” というのがあります。氷の入り具合によっても違ってくるのですが。」

 しかし、自分(宮田氏)より美味しいマティーニを飲む機会があり、或る変化が・・・。

 「今までにないくらい作法が多いので、結局は ”緩い”んでしょうと・・・。飲んでみたら、しっかりとしたジンに融合感。これだけ遠回りして”キリッ”としたのは珍しい、いや”美味しい” な、と。」 重ねて、

 「今までキレにこだわってきたのですが、存在感を出そうと。レシピもステアも変えているつもりはないけれど、そういう意識で作るようになりました。」

 すると、そういった前情報のない常連さんから気付かれることがあり、「どのカクテルでも深層心理が反映されるものですが、マティーニ は特にそういう側面が強いのではないでしょうか。 その日の気分すら其処に出てしまうような。奥の深さを再確認しました。」

  情報収集も兼ねて、週に1度は銀座へお酒を仕入れに行くマスターにウィスキーを紹介いただいた。

宮田氏 と ウィスキー 

 (左から SPRINGBANK FOUDER'S RESERVE 、MACCALAN CASK STRENGTH 、DUN EIDEANN AUCHROISK11年 、LAGAVULIN 16年

 SPRINGBANK FOUDER'S RESERVE : 「人気が高かった1960年代の復刻品。塩っぱすぎず、重すぎず、穏やか。」

 DUN EIDEANN AUCHROISK11年 : 「中身はオスロスク。 シングルトン の名で人気を博したオートメーション蒸留所、2001年に倒産した。その残りを瓶詰め業者が買って詰めたもの。当時好きでした。」

 LAGAVULIN 16年 : 「オフィシャルのスタンダードモルトの中ではバランスが良く一番美味しい。短期間でアイラへ辿り着き、LAPHROAIGBOWMORE をキープされる方は多い。クセない スコッチ から スモーク系 に入る過程で飲んでいただけたら、と思います。」

 「うちへ来ていれば、銀座や六本木のBARへ行っても恥をかかないくらいにはなりますよ。」銀座のレベルを北千住で再現している” と評されるBRASS、高い技術に裏打ちされた酒を愉しむ店でありながら、価格だけは下町の設定に準じている。

  ”BRASS”とは”真鍮”のこと。常に磨いていることが肝要であり、時間の経過とともに味と深みが滲出してくる。

 「10年間スタイルを変えずにやってきましたが、勤めていた期間より店を始めてからの方が勉強したことは多い。よくやったなぁと。いろんな怖さを知らないからできたのかもしれませんね。いま、『同じことをやれ』、 と言われても、到底できませんよ(笑)」

 偶然を必然に変え、自ら仕掛けていくことが自己実現の源であることを教えてくれる。

Dining Bar Brass

住所 : 東京都足立区千住3-33  TEL:03-3882-3322

営業時間:18:00〜27:00  年中無休 

ホットペッパー Brass 紹介ページ

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