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2008年1月16日(水)
【ドリンクチョイスならではの秘蔵酒】 酒楽愉人が書くBlog これまでの酒楽愉人
”坂東太郎 (仁勇)” -鍋店株式会社 神崎酒造蔵- (千葉)
Index
1) ”社員だけ” で 酒造り
2) ”麹米”は 酒の設計図
「杜氏さん・蔵人さんによる酒造りから、”社員だけ”の酒造りに移行して 今年(2007年)で11年目になります。」
鍋店(なべだな:千葉) 専務取締役の大塚恵介氏である。 
1994年、現社長(大塚完氏)が家業に戻るまでは営業面のリーダーとして、以後も 同社長および工場長の高田周作氏と ”新しい酒造り” に挑戦し続けている。
「杜氏さんの経験・技術は素晴らしい。しかし、杜氏さんをいつまでも頼っていると、(会社に)技術力が蓄積できない。」 11年前(1997年)から、酒造(醸造過程の)データを分析しながら改良を重ねてきた。
「酒造りは微生物を相手にしているので、1本、1本のデータを管理していても、1+1=2にはならない。毎年 同じ品種であっても米の状態、気候も違う中で(酒を)造っているのだから、計算式なんて成り立つ訳無いのですけれど。」
「”洗米は第二の精米” と呼ばれており、うち(鍋店)では、”洗米”を重要視しています。
「水温、天気、湿度の影響を受けるため、事前に実験(何秒、何分浸けたらどの程度水分を吸収するか)を行った上で、”浸漬(しんせき)時間” を決定するのです。」
「蒸米(じょうまい)とは(洗米・浸漬で)水を吸わせた米に熱を加える(蒸す)こと。分解しやすい(=溶けやすい)状態(アルファ化デンプン)にするために蒸し上げます。」
鍋店(なべだな)では ”しっかりした味わいのある日本酒”を造るため、酒造における全工程のデータを蓄積し、分析・試行錯誤を繰り返している。
「 ”麹米”は お酒の(味を決定する)設計図 です。良い麹ができないと良い味の酒ができない。あるいは、自分たちが目標としているような酒質(しゅしつ)になりません。」
麹 のことを語るだけで最低5〜6時間はないと語りきれないという。
「”はぜ込み” といって、麹のカビがお米の内部へ次々と入っていっている状況です。良い麹米を造るためには如何に麹力が強く、米の内部まではぜ込んだ麹を造るか。そのためには、”外硬内軟(がいこうないなん)” の蒸し米にする必要がある。外側が硬ければ、(麹菌は生きるために)米の内部に在る水分へ向かって行かざるを得ない。米の内部にある水分は、先ほどの浸漬・蒸米に依るので、大変重要な作業になってきます。」 
「これがまた吟醸・大吟醸になってくると複雑な要素が沢山絡んできます。 磨く理由 は、米の外側には油分やタンパク分が非常に多いためです。(米の)内部になるほど純粋なデンプンになりますから、磨けば磨くほど麹を造る時にはぜ込みしやすい。麹菌が油分やタンパク分も溶かすとアミノ酸に換えてしまう。アミノ酸が多いと味の濃い酒になってしまう。ある程度濃いのは良いのですが、雑味が出てしまうレベルになっては仕方がない。」
『それで、磨いたお酒はスッキリした味になるのですね。』
「温度帯によって出てくる酵素が違います。”どのような酵素バランスの麹を造るのか”、それで味が決まってきます。これが酒母・醪(もろみ)へ進んだとき、原料米がどのような溶け方・醗酵をしていくのか、全てに影響を及ぼすことになるのです。」
「速醸酒母では、乳酸と水の入ったタンクへ麹米を入れます。そうすると、麹米の酵素が水にどんどん溶けてゆく。その後蒸し米(掛米)を入れると、蒸し米(掛米)の中へ糖化酵素が入ってきます。」

「 ”使いたい酵母(優良酵母)だけを純粋に培養すること” がこの 酒母の役目 です。おおよそ2週間程度くらいで仕上がります。酒母ができたら段仕込み へ。なぜ段仕込みにするか というと、優良酵母をまずしっかり培養しておきながら、少しづつ醗酵させるためです。一回で(大量に)仕込んでしまうと、酸が薄まって、野生酵母(バクテリア)も入ってきてしまいますから。常に優良酵母が増加していて、他の野生酵母(バクテリア)を圧倒しているような状況を最後まで保ち続けるために少しづつ投入するのです。」
「初めてですか?甘酸っぱいですよね。酸っぱいのは乳酸。更に進むと、フルーティーな香りも強くなってきます。 吟醸だとまた香りが違いますし.....」
(※今回は特別に味見をさせていただきました)
こんなに旨い(大人の)ヨーグルトは食べたことがない。
「最初(初日)は ご飯を炊いた ときのようにふっくらと盛り上がった形になっているだけなのですが、時間の経過とともに柔らかくなって液状になってくる。これが ”酒母”。」
「こちらは ”初添用のタンク” です。うち (鍋店)では 初添から踊りまでは枝受けタンクにまず開けて、以降3日目に大きいタンクへ移します。」 (※ 一般的には初めから大きいタンクで醪(もろみ)造りを行う)
「酒母を枝受タンクに移して、水・麹米・蒸し米を今朝投入しました。明日一日置きます(踊り)。1工程余計に枝受けタンクを設けているのは、枝受けタンクで、優良酵母がしっかり増加していることを確認してから、次の工程(仲添・留添)に移すためです。」

「初添と踊り、枝受けタンクで3日間。 大きな仕込みタンク(仲添・留添)へ 移動していきます。」

仕込みタンクで、「顔入れて吸ってみてください。醗酵が如何に強烈なものか解りますから。」
『うぐっ』、鼻にグッと突き刺さる・・・この正体は?
「それが ”醗酵” です。炭酸ガスが貯まっています。炭酸ガスは空気より重いですから、タンク下は全く酸素がありません。落ちると即死です。醗酵ってものすごく危険なものなんですよね。」
”醗酵” の様子を目の当たりにすると、”日本酒は生き物である” ことを再認識させられる。
「(BEERでお馴染みでしょうが、) 下面醗酵酵母 は 底面にいくほど醗酵が旺盛です。酵母 (微生物)は酸素が存在する処では酸素を吸い、酸素の無い処ではアルコール醗酵します。酸素が無くても生きてゆける独特な微生物ですね。自分たちの代謝をしながら アルコールを出しながら自分たちで生きてゆくことができる。タンクの中でも麹の酵素による糖化と酵母による発酵が同時進行(並行複醗酵)で少しづつ・・・、酵母にとっては酷(こく)な状況に置かれているのです。彼らは別に(良い)酒を造ろうとして、醗酵している訳ではないのですけれど(笑)。自分たちが生きようとしているだけであってね。」

(※今回は特別に味見をさせていただきました)
「こちらの方が(酒母に比べて)甘くない、とは思います。これ(仕込みタンク)が、夜に見回りへ来ると、”プチプチ” と音が立っていましてね。醪(もろみ)の歌、と呼んでますけれど。」
(写真中央: ”本醸造 吊るし無濾過生原酒” 、右: ”仁勇 本醸造原酒 生しぼり” )
「時期ですから、新酒が良いかと思いまして。”造り”は ほぼ同じでも、”搾り”方が違う2品になります。」
-これが同じ酒?- 「搾り方1つで味が変わるのです。袋搾りの最初・中・後で全然違います。ですから、同じ(品質の)モノ(酒)造ることは、とても大変なことですね。」 
「日本酒度で-90〜-100になります。女性に人気がある、うち(鍋店)独自の商品で、直営店のみ扱っております。製法だけは教えられません。」 
「現在(いま)思っているのは、”良い酒造りたい” ということ。誰でも造り手なら同じこと言うでしょうけれども。”日本酒の魅力”というのは、やはり ”あの味わい”に在る。それから ”食中酒”である。如何に食事の味を引き立てる、あるいは盛り上げる しっかりした味わいのある酒を造っていく のか。淡麗なお酒という部分は焼酎に任せておいて、日本酒は ”日本酒としてのしっかりとした美味さが大事” なのではなかろうかと。思い悩むことも一杯ある訳です。(価格が)高ければ美味しいのは当たり前、しかしそれでは年中飲めない。 ”そこそこリーズナブルな価格で何処まで味わいのある酒造れるのか” 、僕らの大きなテーマですね。”一升瓶 ¥2000以下 (吟醸クラスなら¥2,500)で 何処まで食中酒として毎日飲んでくれて、美味しいねって言ってもらえる酒を造れるか” というのが、これからやはり日本酒として、日本酒メーカーとして生きていく形の中において、最も大切なこと だと、僕は思っています。
創業 元禄弐年(1689年)、”人は仁徳と勇気を持って生きるべし” 310年以上の月日が流れていても、家訓と魂は脈々と継承されている。

鍋店(なべだな)の名の由来は ”座” 制度の一つである”鍋座”に由来している。江戸時代、永年に渡って商いを続けている老舗のことを ”おたな=店” と呼んだことから、「鍋」と「店」で「なべだな」と呼ぶようになった、と言い伝えられている。
「”酒・人・心”が我々が掲げるテーマです。とにかく手抜きせず、1本1本を如何に丁寧にやっていくか、を目標に酒造りをやっております。」
「データを蓄積して、”自分達なりの酒造技術を磨いて行こう”、ということで11年前から始めて、現在では若い人がだいぶ力をつけてきました。これから先は 自分なりの創意工夫というか、オリジナリティをどう高めていくのか、最終的にはどうブランド力を上げて行くのか、が現在における最大の目標でしょうかね。」
住所 : 千葉県成田市本町338 (取材場所: 同社 神崎酒造蔵 )
「清酒全体の流れからみて、本当に何が良いのか、というのは良くわからない。日本酒全体のイメージ.....ですよね。引っ張ってくれる会社が実は何処にもない。(地方では)一部の有名ブランド戦略にかかっている人達が居る(大手メーカーではなく)。でも、それは自分だけ良ければよいのか、というレベルの話からすると、清酒全体の底上げにはならない。最近は酒造りを人任せにせず、オーナー自らが蔵(酒造り)に入る新しい時代になってきたとは思いますよ、特に30代の人達は。酒造りに入って ”自分達で新しい日本酒の価値を高めるんだ” という人達が 現在(いま) 少しづつ業界を引っ張り始め.......」
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